(2007年10月)
アランとの衝撃的な初対面から
1ヶ月ほどたったある日のこと。
その当時の僕とノブは、
僕の実家で両親と同居していました。
夜、いつものように、
ノブをアルバイト先へ迎えに行く僕。
二人で家に帰り、アルバイト先(惣菜屋)からもらった
「売れ残り弁当」
を食べていました。
はい。これは毎日のルーティンワークです。
腐りかけ弁・・・
じゃなくて
売れ残り弁当
って、けっこうおいしいんですよ♪
なにより、当時貧乏夫婦だった僕たちにとって、
一食分の食費が浮くわけですから、かなりの
節約になってました。
そしてその日は、ノブがこんな話を
切り出しました。
かっちかちに硬くなった
「売れ残り弁当」
の中の白米をほおばりながら(笑)
「NOVAがね。事実上倒産したんだって」
「うん。そうみたいだね」
「でね。今日アランがね、惣菜屋に来たの」
「あ、そう」
「アラン、突然泣き出したの」
「何で?」
「仕事はなくなりそうだし、社宅からも追い出されるんだって」
「おまけにここのところ給料も払ってもらってないんだって」
なんでも、アランは駅中の惣菜屋の前で立ち尽くし
、蚊の鳴くような小さな声で、
『もうどうしていいか分かんなくて、不安で不安で・・・ ポロポロッ』
といった感じだったらしい。
ノブの話によれば、アランは2007年の5月末に
来日したとのこと。
そして期待を胸に、6月から英会話講師として
日本生活スタート。
ところが、5ヵ月後には会社は倒産。
期待はあっという間に絶望へ。
う~ん。それはつらい。
いくら恋敵とはいえ、可愛そうに思えてきた。
「へぇー、そうなんだー。つらいね。」
「特に住む場所がないのはきっついなー。」
「何とか助けてあげられないかなぁ」
「うん。僕たちに出来る事は何でもしてあげよう」
・・・と言ってはみたものの、
今の僕らに出来ることって何だろう?
今の僕らには、話を聞いてあげることしか
できないよなぁ・・・
まあでも、今の思いを全部吐き出せば、
少しは楽になるだろう。
よし!アランの悩みを全部聞いてあげよう!
悩み相談には自身があったりして
・・・などと考えていると、ノブが一言。
「うちに住まわせてもいい?1ヶ月間だけ」
「いいよ、いいよ。うちに住んでもら・・・・」
ん?
ウチニ・・・スム???
耳が遠くなったのだろうか?
「ウチニスム?」
「だめ?」
「うちって、ここのうちのこと?」
「うん♪」
おいっ、おいっ、おいぃーっ!
「うちって、ここのうちのこと?」
「うん♪」
いやいや、
いやいやいやいやいやー、それはないでしょーっ!
うち、実家だよ?
両親と同居だよ?
父ちゃんと母ちゃんがアランを見たら腰抜かすよ、絶対。
外国人なんか見たことないんだから!
腰抜かすどころか、ショック死するよきっと。
それ見て僕もショック死しちゃうって!
「どうしても助けてあげたいの」
そんなの絶対無理やって!
あーっ、断りたい!
「そんなの無理だよ」って今すぐ言いたいっ!
・・・でもちょっと待て。
もしここで「NO」って言ったら、
「あんた、器の小さい男ね」
って思われそうで怖い!
イエス?
ノー?
あーっ、どーしよ?
なんて答えたらいいんやーっ!
誰か助けてくれぇーっ!
次の瞬間、僕の口から出た言葉は・・・
「フッ、そうくると思ってたよ」
・・・って、おいっ!
さらに、次から次へと口から言葉が出てきます。
「是非うちに来てもらおうよ。」
・・・おいっ!
「困ってる人をほっとけない性格でね」
・・・おいっ!おいっ!
「両親は俺が説得するから安心して!」
・・・おいっ!おいっ!おいいいいいいっ!
慌てて口を手でふさぐ僕。
「マコリン、ありがと♪」
ぬぁぁぁあああああ!
思ってもないことを言っちまったぁぁぁああ!
続く
日々英会話!
マコリン@ホストファーザー